「採用していい人」とは?

日本経済は,バブル崩壊以降,本格的な立ち上がりを見ないまま,2008年のリーマンショックの影響により,さらに大きな打撃を受けました。バブル崩壊後の失われた10年と言われた時期には「就職氷河期」と言われていましたが,その後さらに「超就職氷河期」と呼ばれた学生にとっては大変厳しい時期がありました。この時期は、求人数の大幅な削減や企業の業績悪化,新興国との競争激化によって,新卒を企業人として育成する余裕がなくなり,現場に即投入できる「即戦力」を新卒に求める風潮が現れました。これにより,採用のミスマッチが発生しました。企業が優秀な人材を選び放題の買い手市場だったかといえば,実際は,一部の優秀な人材に内定が集中し,企業側から見れば優秀な人材ほど内定辞退が相次ぎ,一方,学生側から見れば,大学4年生の約4割は卒業直前になっても未だに内定に至らないという現象が発生しました。

弊社では,過去に遡り100万人以上のESP(The Evaluation of StarPerformer)診断受診データを追跡し徹底分析したところ,ビジネスの感性が非常に高く,パフォーマンスが高い優秀な人財(=StarPerformer)の出現率は,採用マーケットが買い手市場であろうと売り手市場であろうと,市況によらず一定の率を示していることがわかりました。

人事担当者が陥る罠
我々が数々の企業の新卒・中途の採用現場に立ち合う中で,採用担当者が持つ次のような「誤解」に複数の企業で遭遇しました。「誤解」の根底には労働市場における雇用者と被雇用者の関係性の変化に対する認識不足があると考えられます。

まず一つ目の誤解は,「応募が多ければ多いほど優秀な人材もたくさん見つけることができ,結果として多数優秀な人材を採用できる」という誤解です。
二つ目の誤解は,「当社の望む条件を満たす人材かどうか,多角的で詳しい審査が必要である。そうすれば期待値と入社後のパフォーマンスのギャップは少ないはずだ」という社内評価基準に基づくものです。
このような「誤解」が採用活動に反映された場合に起こることは,「大切な人財を採用するための必要条件は多数の応募者を集めることである」という考え方のもとに,リーチの広いメディアを利用してキャッチーな募集広告を展開し,多数の応募書類を集めてそれをスクリーニングし,複数回に渡って筆記試験や面接,グループ討議などを繰り返しながら消去法で最終合格者を絞り込んで内定を出す,というやり方です。
このやり方には「競争の概念」がないのです。

StarPerformer採用の実務
これまでの採用プロセスでは面接が進むにしたがって職位の高い面接官が登場します。逆に言うと数多い応募者を絞り込む第一段階は経営の意志が必ずしも十分に浸透していない一般社員に任せてしまっているということです。この段階でStarPerformer候補が見落とされている可能性はないでしょうか?特に評価の基軸が明確でなかったり,明確であったにせよ明示的に共有されていないケースでは,すぐにでも採用すべき人財をこのプロセスで見落しているケースが実際に少なくないのです。

売り手と買い手の関係性の変化は確実に労働市場にも押し寄せています。新卒市場を例にとっても,就職情報サイトや就職関連のメーリングリスト等で会社や仕事に関する情報交換をするのは今や常識となっています。口コミで広がった情報がネットを駆け巡り,ネット上の情報が口コミで意志を伴って伝わる世の中です。就職雑誌と会社案内,OB訪問以外に会社や仕事に関する情報源が無かった10年以上前に比べると,学生が持つ情報の量と質は格段に進歩しています。これは中途採用に関しても同じ事です。

企業の仔細に関わる情報が溢れている状況で起こることは,採用される側が事前にある程度情報を仕入れた上で会社を評価し,実際に訪問してコンタクトするタイミングでは既に入手した情報を自分の目で確かめる段階に入っています。
つまりハイパフォーマーであればあるほど,自分の本質的な実力を評価してくれない意味のない試験を繰り返して結論を後送りにするばかりの企業に対しては,入社意欲は下がる事はあっても上がる可能性は少ないという事です。
優秀人財獲得の最大のポイントは,当初段階でStarPerformer候補を識別したら,すぐにトップや人事責任者が面接し,採用を決定することです。
彼等は自分の基軸で決断を下すのが早いタイプが多いので入社意欲を損なわないうちに採用にこぎつける必要があります。もちろん,募集の段階でハイパフォーマーをターゲットとした告知を行うことで採用活動そのもののコストと効率も著しく変わってきます。

ESPの導入はムダなプロセスを排除することによって応募者の入社意欲を損なうことなく採用活動を進め,逃さず,確実にStarPerformerにアプローチして採用へと導きます。従来の“最後まで面接に残った人の中から良い人を選べた“と言う自己満足型から,今後は“アクセスに来た人の中から良い人を採れた”と言う視点になって頂きたく思います。つまり“守り”の人事から“攻め”の人事への転換が重要になってくるのです。また、ビジネスの感性が高いStarPerformerは経営トップや人事責任者,自ら抑えに行くという感覚が大切になります。

インターネットを利用した就職ナビが一般的となり,マスマーケット環境に煽られて母集団形成に躍起になっていないでしょうか?買い手市場,売り手市場に関わらず,常に,数少ないStarPerformerをいち早く発見し,獲得アクションを起こすことが重要です。

「Cクラス社員」を採用した場合のリスク
新卒採用以上に中途採用,特にリーダー職採用においては,特に優秀人財,StarPerformer候補の採用が重要となります。

米国の著名な採用コンサルタントによる米国の54企業を対象とした研究結果では,誤ったリーダー職採用によって企業が被る損失は,そのリーダー職に支払う年俸の24倍相当と見積もっています。内容は,当人の報酬・諸経費,当人の求人に関わる諸経費・人件費・求人広告費,解雇費用,後任者の求人費用,教育・研修費用に加えて,失敗による信頼喪失や機会損失による無形の損失を含んでいます。
さらに,世界50カ国以上に90を超える拠点を持ち,全世界の様々な業種・業界を対象に,各企業のトップマネジメントが直面する経営課題解決とその実行支援を手がける世界トップレベルの戦略コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーでは,このようなマネージャを「Cクラス社員」と呼び,「Cクラス社員がCクラス社員を採用する」,その結果,組織の人的ケイパビリティーが貶められると断罪しています*。
貴社には,そんな「Cクラス社員」を採用してはいないでしょうか?また,そんな社員に大切な採用面接を任せていないでしょうか?
ビジネスプロデュースのご提供するソリューションは,採用プロセスを変革し,「Cクラス社員」のリスクから開放されることが可能です。

*Beth Axelrod, Helen Handfield-Jones, and Ed Michaels, “A New Game For C Players”, Harvard Business Review 80, no.1(January 2002)

採用コスト「よいお客様」へのリソース集中
上記にもあるとおり,採用業務一つとっても莫大なコストがかけられています。説明会会場費用,面接費用,面接官人件費,広告費用,印刷費用…。また,何より貴重な時間を投資しているわけです。
貴重な経営リソースは,有望な市場・顧客に集中投下するのが当然となっていますが,なぜか採用においては,「公平原則」に基づき,どのような応募者に対しても同様の選考プロセスを適用してしまっています。
弊社では,採用プロセス当初でビジネスの感性が高く,ビジネスで活躍できる人財かどうかを見極め,確実に獲得できる提案をしています。採用に関わる費用・時間というコスト削減だけでなく,トップ・人事責任者のリソースも有効に活用することができます。
何よりStarPerformer候補の採用という,代えがたい成果を得ることができます。

採用していい人,採用してはいけない人
ビジネスの感性が非常に高い最優秀人財は,いかに効果を発揮するかという観点で行動し,視野を広くもち将来を見据えて思考します。次に,優秀人財は,とにかく積極的にひたすら行動し,いかにトップを支え,指示・指図どおりに仕事をこなすかという観点で考えます。
ビジネスの現場で結果を出さない,出せない人材は,口だけ達者で,実際には行動力がない。考えるのは得意だが,趣味嗜好に偏ったひとりよがりの思考。中には,本人は必死に行動しているつもりだが,周囲や社内外に対して後ろ向きあるいは致命的な動きをしてしまっている者もいます。

ビジネスの感性が非常に高い最優秀人財の特徴は,ポテンシャルが高く×センスが高い人財です。こういった人財は,ビジネスリーダータイプ,まさに『StarPerformer』候補となり得る人財です。ビジネスの方程式を自分で組みたてる力があるこのタイプにはマーケットも商品もある程度の自由度を与え,制約条件の少ない環境で仕事をさせるべきです。最短,最良の方法を白紙から考え,最大限のアウトプットを出す可能性が高いタイプです。

次に,ポテンシャルは高いがセンスが低いオペレーションリーダータイプは,どちらかというと所与の環境下で競争して力を発揮するタイプです。前進するエネルギーと上昇意欲は旺盛ですが,方向性を白紙から考えたり仕組みを作ったりする能力が比較的弱く,最短距離思考が徹底していない面があります。努力派で期待通りの安定感がありますが,このままだと限界がきます。目標を明確にし,育成すれば,企業に欠かせない人財となります。

ポテンシャルが低くセンスが高い人材は,評論家タイプ・学者タイプ。一見企画力もあり,発想も豊かですが,絵に描いた餅に終わるパターンが多く見られます。また,成果に対する執着心が薄く,行動力,実行力が伴わないタイプです。頭ではわかっているつもりですが,なかなか足が動きません。話を聞いている分にはそこそこやりそうですが,結果は期待ハズレのケースが多く見受けられます。ビジネスパーソンとして安定して高い成果を出しつづけるようになるには強い意識改革が必要です。

ポテンシャルもセンスも低い人材は,ハッキリ言ってビジネスに向きません。本人は一生懸命にやっているつもりですが,かえって周りに迷惑をかけます。このタイプを特にビジネスパーソンとして新規に採用することは避けるべきですし,育成するにしろ営業として教育リソースを投入するには無駄が多いので,別の職種でのキャリア開発を検討するべきでしょう。

貴社の人材を思い浮かべてください。もしも採用してはいけない人材に相当する社員が多く思い当たる場合は,貴社の人財戦略には改革の余地が大きいと思われます。

ビジネスの感性が高い優秀人財=StarPerformerの維持
マッキンゼー・アンド・カンパニーは,2000年に,入社する際,また留まることを決意した際の決め手となった要因について,社内調査を実施しました*1。その結果を見ると,最高の支持を集めた要因は「困難だが面白い仕事」,つまり「やりがいのある仕事」という大分類に含まれるもので,59%という圧倒的な支持がありました。また,この要因と全体としての会社に対する満足度との相関には強い因果関係があったと報告されています。また,大分類レベルでも,「やりがいのある仕事」は全般的に高い支持を得ており,逆にもっとも支持が低かったものは「報酬」でした。
同様の調査は,世界最大のコンサルティング会社アクセンチュアでも,従業員が企業に求める組織環境調査として,継続的に実施されています*2。「社員を鼓舞するリーダー」「面白い仕事」「柔軟なワークスタイル」「多様な人材とのコラボレーション」「競争力ある報酬」「学習の機会」の6つの観点で調査しています。
その結果,調査開始以来,常に「面白い仕事」が最大の支持を集める結果となっています。6観点の中から一つ最重要なものを選択せよ,といった問いに対しては,40%以上が「面白い仕事」と回答しており,他の観点が10%程度であることを踏まえると、極めて高い価値として共有されていることがわかります。
コンサルティング会社は,従業員そのものが商品であるため,人事については何よりも熱心に取り組んでいる会社と言えます。また,その商品の対価として顧客に高額のフィーを要求する以上,一般に優秀人財が多い組織でもあります。

*1:McKinsey & Company. War For Talent 2000 Survey.
*2::Accenture. Japan People Satisfaction Survey 2001 Spring.

優秀人財,StarPerformerを維持するためには,彼らに面白くやりがいのある仕事を与え続け,光り輝く場面を提供することが何よりも重要なのです。
そのためには、職位だけでなく担当する事業分野・マーケットも含めた適材適所を図ることが必要です。

以上のように,弊社は独自理論を背景に,組織力強化教育やコンサルティングを事業として行ってきました。お客様から高い評価を頂戴し,この独自理論をさらに高度化するために,StarPerformerの可能性を持つ人を確実に抽出する手法として,現役でダントツの実績を上げている様々な業界のトップビジネスパーソンたちの「思考パターン」や「行動パターン」を分析しています。
先行きの見えないこの時代に,「企画力」を持ち合わせた「実行力」に秀でた人財,ビジネスの感性が高いStarPerformer候補を発掘することが,貴社の競争力強化,そして,経営革新に繋がります。弊社は,採用から組織改革まで,人財が活躍できる企業作りに最適なソリューションをご提供できるものと確信いたします。

お問い合わせはこちら
ESP診断の概要・特徴はこちら