【社長通信】「叶匠寿庵(かのうしょうじゅあん)」という和菓子屋の話

ある経営者の方から感動的な話を教えていただいた。

「芝田社長は、社長の心を自分の心とし、お客様の喜びを自分の喜びとしてどんな苦労にもめげない社員を育てることに命を捧げた」とのこと。

ある時、こんなことがあった。京都の哲学の道にある茶室でお菓子を買われたお客様が、代金を払うと、お菓子を置き忘れて、そそくさと帰られてしまった。気づいた女子社員が急いで後を追ったが、見当たらない。転機を聞かせた彼女は、一人でタクシーに乗り、京都駅に駆けつけた。接客の会話の中から、東京の人で、何時の新幹線に乗るかわかっていたからである。発車のベルが鳴り止む寸前、間一髪で新幹線に飛び乗ることが出来た。

長い長い列車を捜し回り、お客様を見つけたのは、もうすぐ名古屋という辺りだった。お客様は、驚くやら、感謝するやらで、何度も何度もお辞儀を繰り返し、握手を求め、全身で喜びを表現された。疲れた乗客が多く、殺伐とした車内で、その一角だけがパッと光が射したように輝いて見えたという。

お客様が、「きみは、これからどうするんだ」と、目頭を熱くして尋ねられた。

女子社員は、「お会いできて、本当に嬉しかったです。ちょうど名古屋ですので、京都に引き返させていただきます」と、笑顔を残して辞去すると、列車が見えなくなるまで手を振って見送った。

この女子社員は、社長の命令で、そうしたわけではない。自分の機転と判断で、わずか数千円のお菓子を持って、新幹線に飛び乗ったのである。お金では代えられない叶匠寿庵の心が、お菓子に込められていることを、社長と同じように知っていたからである。

芝田さん(社長)が、このことを知ったのは、彼女からの報告からではない。お客様が感動を雑誌に綴って、それを送ってくださったからである。」

皆さんはどのように感じますか?